skip to Main Content

スタートアップだからってスーツを着ないのは、あり得ないよね

業界や役職にもよりますが、スタートアップでは一般にスーツ姿を見かけることが少ないのではないかと思います。大切な営業に際して創業社長がスーツを着て出社したとしても、「七五三ですか!?」「社長、いよいよ転職活動ですか?」などと、いじられることすらあるかもしれません。

冗談はさておき、スタートアップの創業者や、そこで働くヒトが何を着るかというのはなかなか興味深いテーマです。

同じ土俵に立つと、単なる零細企業の社長になる?

一般論としては、B向けサービスで伝統企業へ営業に行くときなど、先方がスーツならスーツを着たほうが良いということになるのではないでしょうか。交渉やコミュニケーションの成功率を上げることを目的としたとき、もしそうしたほうが良いのであれば、自分のスタートアップの掲げる「私たちの働き方」やスタイルなど、取るに足らない話です。成功のためにスーツを着たほうがよければ、スーツを着るべきでしょう。いくら自分が電話が嫌いでも、相手が電話でのコミュニケーションを好むなら電話を使うべきというのと同じです。

実際、多くのB向けスタートアップの創業社長は、開発フェーズを終えてエンタープライズ向け営業を始めると、スーツ率がぐっと上がりますし、C向けスタートアップであっても資金調達時の訪問先によってはスーツを着たほうが良い場面はあるでしょう。

ただ、伝統企業を相手にするからといって、スーツのほうが交渉の成功率が高いのだろうかというと、はっきりした答えは誰にもわからないのではないでしょうか。

スタートアップは新しい技術やビジネスモデルを持ち込み、業界に新風を吹き込むものという世間や顧客の期待があるかもしれません。その象徴がジーンズなのだとしたら? という問いです。実はCoral Capital内でも創業パートナーの澤山がスーツを着てきたことをキッカケにして、リアルにそんな議論をしたばかりです。スーツを着るとしても足元だけはスニーカー(allbirds)にするのが良いのでは、という話も出たりしています。

私の前職のGoogleでも営業担当者が日本の大企業を訪問するとき、ジーンズどころか金髪にピアスといったヒトがいました。そのほうが「御社らしい」と先方に喜ばれるという話でした(全般的にはセールスチームはスマートカジュアルが主流で、担当業界によっては外出時のスーツも普通でしたが)。

もう1つ、面白いなと思ったのは、あるB向けSaaSの創業者の話です。相手が大会社の社長でも、あえてスーツを着ないで応接室に乗り込むという話です。いわく、スーツを着ると相手と同じ土俵に立つことになり、そうすると規模から言って大企業対零細企業の社長という構図になってしまうから、それを避けたいというのです。デジタルトランスフォーメーションの掛け声でもオープンイノベーションでも良いのですが、デジタルの波がビジネス全般のあり方を塗り替えつつある今、その担い手たちの象徴がジーンズであるのだとしたら、これをシンボリックに利用しない手はない、というところでしょうか。私たちは異なる部族の民ですが、ぜひあなたの部族とご一緒したいというメッセージです。もっとハッキリさせるために自社のロゴ入りTシャツで1年中すごすというスタートアップ創業社長も珍しくありません。コミットの本気度も伝わり、印象にも残る良い方法だと思います。

実際には多くのスタートアップ関係者は、上記のような戦略的思考の結果としてのジーンズではなく、単にめんどくさい、暑くるしい、動きづらいから、という理由でカジュアルな服装という人も多いでしょう。内勤なら、なおさら。人的関係性をコンバージョンしていくのが主体だった時代のビジネスでは、特に初対面の信頼関係醸成が重要でした。それが現在、オンラインにトランザクションが移り、それをコードでスケールする時代になっていますから、そもそも服装など見えません。逆に、相手が見えるときには、むしろ服装以外の言動が良く見えるのがSNS全盛の現代社会です。ネット上の言動から見える人となりや実績など、判断材料がぐっと増えたことで、対面時の服装の果たす役割が相対的に低くなっているのかもしれません。向き合っている業界によって違いますが、SNSで露出しているスタートアップの創業社長であれば、Twitter上の発言のトーンのほうが、ネクタイの色柄より大切という時代でしょう。

現在のテックビジネス系の人々のカジュアル文化は、1970年代に業界を席巻し(そして一気に凋落した)伝説のゲーム会社アタリに端を発するそうです。もともとは「スーツを着なくてもビジネスはつくれる」というアンチテーゼだったようですし、「(立場上)偉い人が偉そうな服を着ていない」ことがフラットな組織の象徴だった面があるかと思います。産業革命前後を描いた映画でみる資本家と工場労働者の対比が典型ですが、人類の歴史を通して服装ほど社会階層の違いを明示してきたものはないと思います。そう考えると、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスのような資産家たちですら、私のようなユニクロ部族の民族衣装と大して違わない衣装をまとっているのは、ちょっと面白いことだなと思ったりもします。

スタートアップの皆さん、服装について社内ガイドラインや外部面会時の暗黙のルール、自分の中での基準はありますか?

企業文化の構築
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

Coral Insightsに登録しませんか?

Coral Insightsのメーリングリストにご登録いただくと、Coral Capitalメンバーによる国内外のスタートアップ業界の最新動向に関するブログや、特別イベントの情報等について、定期的にお送りさせていただきます。ぜひ、ご登録ください!

Back To Top