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リリースの7段階でPMMの役割を理解する―、SmartHRに聞いた【後編】

まだ比較的新しく、耳慣れない人も多いかもしれないPMM(Product Marketing Manager)。比較的早期からPMMを役職として作り、体制・組織づくりに取り組んできたSmartHRでPMMを務める重松裕三さんに話をお聞きました。記事の前編ではPMMの役割や、PM(PdM)との違いについて解説していただきました。後編となる本記事では、PMMの具体的な仕事内容について、SmartHRが9月にローンチした新規HR関連サービス「従業員サーベイ」で重松さんが行ったことを実例に、PMMがどのようなことをするのかについて解説いただきました。

新規プロダクトリリースまでの7段階

――プロダクトを「売る」部分に責任を持つPMMですが、実務的にはどのようなことをするのでしょうか。

具体的なタスクを洗い出すと、以下の図にもあるようにプロダクトのローンチ前は、ポジショニング・メッセージング・顧客からのフィードバック収集・プロダクトをマーケットに投入する戦略策定を行います。プロダクトをリリースしてからは、プロダクトをより良くするためのリサーチ・改善ポイントの発見を目指し、利用状況の分析などを行い、プロダクトの改善に務めます。

プロダクトの段階に合わせたPMMの仕事について、7つのステージ毎に必要な仕事を説明します。こちらの整理は、マーケティングプラットフォームのスタートアップ、Driftのブログ記事を参考に作成しています。また、7段階に分けていますが、これらは「新規プロダクトローンチ」における整理です。既存プロダクトを担当するPMMは、多少異なる部分があります。

――従業員のエンゲージメントを測定する「従業員サーベイ」という新しいプロダクトのローンチに重松さんが関わったそうですね。今回のリリースで行ったことを例に、7つの段階で行うことを具体的に教えてください。

まず、ステージ1ではカスタマーディベロップメントを行います。この段階では、ユーザーヒアリングを通して、お客様が「どのようなプロダクトを欲しがるのか」を見つけ出し、ペルソナの作成を行います。

従業員サーベイについては、「組織全体としてのヘルスチェック」を行いたいというニーズが、弊社のペインとしてあったのがプロダクト企画のきっかけでした。従業員の状態を把握するためのプロダクトは既存他社製品をいくつか導入していましたが、どれも最終的には、合いませんでした。そこで、SmartHR本体の強みを活かして、プロダクトを作ることにしました。SmartHRの既存のお客様にヒアリングを進め、「従業員サーベイ」に必要な要素を探っていきました。

9月24日にリリースしたSmartHRの従業員サーベイ。担当者がアンケート結果とSmartHR内の従業員情報を組み合わせたクロス集計ができるのが特徴。部署や雇用形態、評価などと組み合わせることで課題発見に繋げる。従業員サーベイはSmartHRの全プランに対応し、オプション機能として利用できる

 

ステージ2では、競合のリサーチやプロダクトのコンセプト策定を進めます。この段階で、ステージ1で見つけた潜在ニーズと照らし合わせながら、どのようなプロダクトを作るべきかを精査していきます。具体的には、競合になり得るプロダクトとの違いの整理などです。

SmartHRでは、このタイミングでMRD(Market Requirements Document)という文書を作ります。マーケティングにおける分析手法としてよく使われる4P、SWOT、STPなどのようなフレームワークを使いながら現状分析し、市場のニーズやそのプロダクトが、誰のどういう課題を解決するものなのかをまとめます。ステージ2以降は、このMRDをもとにして開発・ビジネス戦略の策定が進むので、このMRDは重要です。

そして、ステージ3に進みます。ここでは組織全体に対して、「なぜこのプロダクトの開発を今しなければならないのか」というメッセージを伝えていくのが重要です。組織全体の足並みを揃えるためにも、開発・販売に関わる全員に共通認識を持ってもらわなければいけません。ここで経営陣としっかり目線を揃えたことを確認したら、ステージ4へと移行します。

ステージ4から、様々な人を巻き込んでいきます。まず、PdMをアサインします。PdMはPRD(Product Requirements Document)を作成して、デザイナー・エンジニアをアサインし、プロダクト開発に進みます。このタイミングでPMMは、市場投入戦略を固めていきます。また、ベータ版の提供などで、既存のお客様とのコンタクトをとりはじめるので、カスタマーサクセスの巻き込みもこの段階から始めます。

重松裕三(しげまつ・ゆうぞう)。2012年、新卒としてピクシブ株式会社に入社。Webディレクター・営業を経て、プロダクトマネージャーとしてキャリアを積む。同社では、プロダクトの立ち上げから運用まで担う。その後、2019年よりSmartHRにプロダクトマーケティングマネージャーとして入社。現在に至る。

――「市場投入戦略」とは具体的にどのようなことを考えるのでしょうか。

全体のスケジュール、プレスリリースなどの情報発信、プロダクトの売り出し方、目標値について考えます。どのようなプレスリリースを書くのか、メディアコンテンツをどう仕込むかなどの計画を広報に相談しながら進めたり、リスティング・ディスプレイ広告をどのように仕込むかなどをマーケターに相談したりしながら計画を作ります。また、既存のお客様に向けたキャンペーンの企画や、メールマガジンの配信なども考えます。

従業員サーベイのリリースでは、SmartHR Mag.という自社メディアのコンテンツ作成しました。これはマーケティングチームとの連携が中心で、それに加えて外部メディアの案件を広報チームが獲得してくれたので、その取材対応への準備も進めました。このようにローンチタイミングでの情報発信については、マーケティングチームや広報チームと一緒に進めます。

また、従業員サーベイはクローズド・ベータ版をSmartHR本体を利用いただいているお客様に提供し、フィードバックをいただきながらプロダクトの改善に取り組みました。ベータ版を仕込むことで、リリース前の段階からプロダクトを認知してもらうのも狙いのひとつでした。

ここでのフィードバックはUI・UXの向上に繋げています。一例を挙げると、権限管理についての導線で、発見がありました。SmartHR本体の権限管理と従業員サーベイの権限管理は別管轄なので、最初から設定しないといけません。「初めてアクセスしたときに違いがあることを認識できず、困惑した」という反応をいくつかいただきました。そこで、権限設定がなされていなければ、ポップアップを出すようにしました。

ステージ5からはセールスを巻き込み始めて、デモ環境の用意・営業資料作成を始めます。セールス目線から、資料構成やメッセージングのフィードバックをもらいながら作ります。

販売に必要な資料などが完成したら、いよいよステージ6です。リリースのためのチーム準備をはじめます。作成した資料をもとに、セールスチームへの説明会を開いたり、オンボーディングについてカスタマーサクセスチームと計画を進めます。また、サービス紹介のページの作成、カスタマーサポートの体制構築とヘルプコンテンツ作成などの準備を始めます。

これらの準備が全て揃ったことを確認し、サービス開始です。プロダクトのローンチと共にステージ7へ進み、勝敗分析・利用状況の分析に移行します。

――従業員サーベイがリリースされてから1か月ほど経ちます。どのようにして、勝敗分析・利用状況分析を進めるのでしょうか。

勝敗分析では、他社サービスとバッティングしたときに、なぜ勝ったのか、負けたのかという分析を価格・機能などの要因から進めます。MRDで基本的な競合分析をしているので、その理論に当てはめながら分析していくイメージです。

これらの勝敗分析を通して、今後改善していく点などが見つかれば、また7つのステージの最初、もしくは途中に戻って新たに開発ないしは、プロダクトの売り方の見直しを進めていきます。基本的には、この7つのステージを循環するイメージで考えてください。

プロダクトの成功は、基本的にはMRR(月間経常収益)で判断します。ローンチ前に設定した目標に到達しているかどうかが判断の基準となります。PMMの評価はプロダクトの成功によって大部分が決まるので、この目標の到達はPMMの醍醐味でもあります(笑)。人件費等を含めた粗利は、個々のプロダクトの評価の数字としては用いていません。

PMMには「作る力」と「伝える力」が必要

――ちなみに、SmartHRのプロダクトマネジメントチームは、どのような組織体制になっているのでしょうか。

PdMが10名、PMMは7名です。PMMの内訳としては、既存プロダクト担当が5名、新規プロダクト担当が2名です。SmartHR本体はプロダクトの規模も大きいので、教育体制もしっかりと整え、再現性を持たせるよう、組織づくりを進めています。一方、新規プロダクトに関しては、全てのフェーズを1人でやり切ることが求められているという状況です。

ただ、新規・既存どちらにせよ、プロダクトを通してビジネスを作ることに強い関心を持つ方にとっては、PMMは相性のいいポジションだと思います。SmartHRでも、PMMは絶賛採用中なので、興味のある方はぜひ、飛び込んでみてください

――今後、PMMを目指す方もいると思います。どのような人がPMMに向いているかも教えてください。
自分の考えと責任をしっかりと持ちつつ、多方向から人を巻き込める方は向いていると思います。特にSmartHRの場合は、様々な部署があり非常に複雑な組織体制になっているので、それぞれの専門家をいかに巻き込んでいけるかというのは適性のひとつだと思います。売上の数字達成への関心が強い方は向いていると思います。

また、スキル的には、PdMの経験があると良いと思います。前編でもお話したように、PMMはPdMとともにプロダクトマネジメントトライアングルを分担していくので、PdMのスキルは存分に活かせると考えています。そのため「作る力」と「伝える力」の双方を備えている方は相性が良いでしょう。

(取材・構成:馬本寛子)

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