超アナログな貿易業界をDX化、物流スタートアップが挑む「不確実性のかたまり」

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Written by 増田 覚
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Coral Capitalは6月、出資先7社のプロダクトマネージャー(PdM)が抱える課題を赤裸々に語るトークイベントを開催。現役もしくは今後PdMへの転身を考えている人など約150人が参加し、登壇者が語るリアルな実情に耳を傾けました。

本記事では、株式会社Shippioの森泰彦氏による、「難関、貿易業界DXに挑む」と題したライトニングトークの内容をお伝えします。

※情報開示:Coral CapitalはShippioの株主です。

森泰彦 (株式会社Shippio VP of Product)マイクロソフトにてOffice、Windows、Windows Phoneの日本市場向け新機能開発のPMとして従事後、Office開発部門のPMマネージャーとしてグローバル市場向け新プロダクト・サービスの立ち上げを指揮。ラクスルで広告事業のプロダクトオーナーとしてTVCM事業の立ち上げに従事した後、フリーランスPdMを経て、2019年3月にShippioに参画。現在はShippioのプロダクト開発を統括。

レガシーな貿易業界をDX化する「デジタルフォワーダー」とは

株式会社Shippioは貿易テックのスタートアップになります。貿易業界は非常にレガシーな業界でして、そこをテクノロジーの力で新しいスタンダードを作るのをミッションとしています。

貿易業界の課題で特に大きいのが国際物流です。Shippioはこの領域で「デジタルフォワーダー」として、お客様の輸出入のお手伝いをしています。

フォワーダーと言っても皆さんご存じないと思いますので、簡単にご紹介させていただきます。

まずShippioが輸出入のお手伝いをしているのは、ワイン1箱とかではなく、コンテナです。


荷主がコンテナを海の向こう側に送るためには、船会社や航空会社だけではなく、海の両側のトラック会社や倉庫など、さまざまな事業者との手配・調整が必要です。

荷主がそれらの調整を全部やるのは大変なので、間に入って手配・調整するのが「フォワーダー」という仕事になります。

一部ではトラックや倉庫を持つフォワーダーもいますが、Shippioはそれらをいっさい持っていません。その代わりに提供しているのが、荷主の国際物流の課題を解決するプラットフォームの「Shippioクラウドサービス」です。

超アナログ、煩雑、不確実……国際物流は実務コストがかかりすぎる

国際物流業界は本当に課題だらけです。

まず、超アナログ。コミュニケーションは基本、電話かFAXかメール。案件の管理は紙、良くてもExcel。メールにExcelが添付されていればモダンな方という世界観です。

なので、レスポンスが遅かったり、発注後にサプライチェーンが見えなかったり、転記などの無駄作業が多かったり、人力なのでミスが多かったり……という具合です。

煩雑な手続きの最たるものが各種の貿易書類です。輸出と輸入で必要な手続きは異なりますし、輸出でも何を輸出するか、どこに輸出するかによって、必要な手続きが変わってきます。

「貿易は不確実性のかたまり」数十回の輸出入で、数人月の作業

なおかつ、貿易業界は不確実性のかたまりです。

船は予定通りに着く確率が低いので、お客様は納品先との納期調整を毎日のようにやっています。

それ以外にも、税関の抜き打ち検査や、倉庫からのリスケ依頼のようなイレギュラーな事案も発生するので、お客様は貿易実務に多大な工数をかけているわけです。

例えば月に数十本のコンテナの輸出入ともなれば、その工数は数人月になります。この工数はお客様にとってはコストなんですね。

Shippioクラウドサービスはテクノロジーでこうした業務負荷を下げ、お客様がビジネスの成長に直結するところにリソースを投資できるようにするのです。

クラウド上で貿易実務が完結する

では、Shippioクラウドサービスを簡単にご紹介させていただきます。

まずは、書類やタスクを案件ごとに整理します。さらに、案件ごとのチャットコミュニケーションによって情報を一元管理し、管理コストを削減します。

関係者全員が同じ情報にアクセスできるようにすることで、コミュニケーションコストの削減を実現しております。

貿易にまつわるスケジュールは今までブラックボックス気味でしたが、船をトラッキングするなどして、テクノロジーの力で可視化しました。

見積もり確認や発注もクラウド上で即時にできるようにすることによって、お客様の業務スピードアップを実現しています。今までは見積もりを依頼してから3日後に返事があり、それからFAXで発注するような流れでした。

プロダクトマネジメント最初の一歩は、顧客のボトルネックを探すこと

ここからは、Shippioならではのプロダクトマネジメントの特色を2つ説明させてください。

1つ目は、顧客の業務フローやモノの流れを可視化して、課題を特定することです。貿易は自分ごと化しづらい領域でありますので、ここが大事になってきます。

プロダクトマネージャー(PdM)は、セールスやCSと一緒にお客様としっかり話し込み、お客様の業務フローを可視化して、ボトルネックを特定してから、初めてソリューションの検討に入ることを徹底しております。PdMの業務時間の30%くらいは、ここの解像度上げることに使っています。

「運用ありき」のプロダクト設計の難しさ

2つ目は、プロダクトの設計には、オペレーションの設計も求められます。プロダクトを作るときは必ずオペレーションチームと話し、運用を設計してからリリースすることを徹底しています。

ちょっとかっこいい気味のことを言いましたが、これをやりきるのはやはり結構難しく、弊社も失敗だらけです。

フォワーディングオペレーションはPDCAを回しながら、日々進化を遂げています。オペレーションは繁忙かどうかや、世界情勢のインパクトで工数の波があるので、プロダクトリリース前の想定オペレーションフローとの乖離が発生し、顧客体験の低下につながることもあります。


ですので、Shippioのプロダクトマネジメントは、プロダクトだけアジャイルに進化させるのではなく、プロダクトとオペレーションが足並みを揃えてトライ&エラーを繰り返しています。

デジタルだけではなく、ヒューマンの要素も大きいので、非常に楽しいプロダクトマネジメントだと思っております。

Shippioのプロダクトは登山で言えば一合目ぐらいですので、「面白そう」「我こそは」と思う方がいましたら、一緒に貿易を超える顧客体験を一緒に作りましょう(Shippioの採用情報はこちら)。


【プロダクトマネージャーが抱える課題トーク、全記事一覧】

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