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B向けでユーザー事例を出すなら、契約時に条項を入れておくのも手

Coral Capitalの投資先の1社からコンテンツマーケティングの相談を受けました。オウンドメディアを検討しているという話でした。業界構造とプレイヤーの種類、当面ターゲットとしたい利用者像の説明を一通り受けて思ったのは、典型的なターゲットユーザーに対して、導入後のイメージが湧くユーザー事例を3〜5例、ウェブサイトに掲載するところからスタートすると良いのでは、ということでした。

もともと書くことが好きな社長であれば、社長ブログも良いでしょう。でも、オウンドメディアは簡単に外注できるようなものではなく、内部でそれなりにリソースを確保する必要があります。だから、シードステージのスタートアップには向かないと思います。それよりも、まずユーザー事例をサイト上で出したり、PDFとして作っておいて、いつでも配れる営業資料にすることが大事だと思います。最初は事例コンテンツ用にCMSを用意する必要すらなく、静的なページを作るだけで十分です。

さて、ユーザー事例を出すときに問題になるのは、「(表に)出てくれるユーザーが見つからない」というものです。よくあるのは、PMFが達成できてユーザーも喜んでくれているから成功した導入事例として外向きに情報発信したいのだけど、いざ導入企業の担当者に「事例として出ていただけませんか?」と依頼すると、軒並み断られてしまうという状況です。特に1件目の事例紹介となると、余計にハードルが高いでしょう。

これはスタートアップに限らず、大企業が販売するエンタープライズのソリューションでも同様です。導入企業や担当者側に立って考えると、自分たちの社名や担当者の名前が出るメリットがあまりない、というのが根本にあります。

人材の流動性が高い米国などでは、IT担当者やCIOなど、SaaSやIT製品の導入を進めてコスト削減や業務効率化で成果を上げれば、それが実績になりキャリアアップに繋がります。昇進やランクアップの転職ですね。でも、日本企業はそうしたインセンティブが小さいのです。

ですから、オススメなのは顧客との契約時に、将来成功だと言える導入となった場合には事例として出てください、とお願いしておくことです。もっと良いのは契約書に書き入れてしまって、「われわれスタートアップ企業にとっては、事例の積み重ねが命なので、この条項は一律で入れさせていただいています」と言い切ることです。もちろん御社にとって成功と言えなければ出てくださいとお願いすることはありません、と言い添えましょう。

スタートアップやテック業界で顕著ですが、いまは日本でも人材の流動性が出てきましたし、長期の雇用の安定より、特定のスキル習得や経験を積むことを重視する人が増えつつあります。コ・マーケティング的な共創・共感を広げる時代でもありますから、すでに風向きは変わってきていると思います。業界、社会にとって良い話を一緒に広めさせてください、一緒に成長させてくださいと、あらかじめ握っておきましょう。

【参考】顧客と良い関係を維持してユーザー事例をたくさん出しているSmartHRの事例集や、Holmesの事例集ページが参考になると思います。またシードステージで数は少ないながらもユーザー事例を出している例として、KAMINASHIの事例集も参考になるでしょう。

 

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Partner @ Coral Capital

Ken Nishimura

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