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日本の起業家は、もっとメディアに売り込もう

商業媒体の記者・編集長を経験してきた元メディアの中の人として、起業家の皆さんにお伝えしたいことがあります。メディアへの取材ネタの売り込みは、遠慮などせずにガンガンやろう、ということです。

例えば資金調達のリリースで記事化を打診する場合、メールやメッセを出して返信がなかったからといって、そこで諦めてはいけません。「見落としているかもしれませんので」と言いながら、2、3日後に1行だけ追加したメールを送るべきです。なぜなら、実際に見落としや、後回しにして忘れているという可能性があるからです。

それなりにトラフィックのある商業メディアが、日々たくさん流れ込んでくる売り込みにどう対応して選別するかは媒体によって違いますが、結構、現場の担当レベルで決まってくるものです。新聞系であれば、産業・業界ごとに担当がありますし、ネット系媒体だと、その媒体で扱っているサブカテゴリーごとです。私がいたTechCrunchのような新興ブログメディアでは、それぞれのライターが自発的に特定ジャンルを追いかけていることが多いです。一度何かを書くと、同ジャンルの話が集まりやすくなり、そのことで、その担当記者が詳しくなり、書く効率や内容が良くなるので、さらに担当の棲み分けが進みます。

現場の取材・執筆担当の記者・ライターに与えられている自発性や裁量は媒体によって違います。現場が「記事にするべき」とデスクとかキャップと言われる人、あるいは副編集長や編集長といった人に説明するパターンや、逆に編集長から「こんな売り込みがあったんだけど、このへん抑えておいてくれないかな」とアサインに近いやり方のこともあります。内部の交通整理の仕方も、ブログメディアならWordPress上にいきなりタイトルを書き入れてしまうケースやスプレッドシート管理のところ、TrelloのようなToDo共有を使うケースなどさまざまです。ただ、インバウンドで入って来るチャネルは様々なので、少し業務量がパンク気味になったり、優先度の高いニュースが連続すると、内部調整が間に合わなかったり、それこそ担当者レベルでうっかり抜け落ちたりということもあります。

編集長という立場にいた私は、中立で公平でありたいと強く思っていました。それは職業倫理から出てくるものでもありますが、本質的にはメディアに対する信頼性の担保、つまり中長期のマネタイズに欠かせない基本だとも考えていました。だから、タイミングや運で特定企業のリリースが記事になるかならないかが決まるのは、取材対象である企業の方にも、読者に対しても不誠実だから避けたいと思っていました。とはいえ、実務をしているチームも担当者個々人も人の子です。とつぜん体調を崩したり、たまたま記事が重なって予定していた取材ネタが拾いきれないことが起こります。特にネット系媒体は少人数で回しているので、その傾向が強いです。

だからこそ、です。起業家の皆さん、あなたが送ったメールに返信がなかったからといって1度で諦めることはありません。それは繋がりのない媒体にコールドメールを送るときでもそうですし、すでに繋がりのある記者・ライターに送るときでもそうです。「見落とされてるといけないので、念のため」といって、あまり相手にプレッシャーにならないように、打診は2度、3度と行いましょう。大丈夫、しつこい売り込みに対して失礼だなどと思う記者は少数派です。むかしは午後3時に電話をすると怒って説教を始める新聞記者もいたそうですが、今はメールやメッセの時代。不要なら単にスルーするだけですし、非同期コミュニケーションだから負担にもなりません。もちろん、ネタを売り込むときには相手の媒体や記者の立ち位置を考慮した上で、相手の仕事がラクになる素材やストーリーを用意することは忘れずに。

私がいつも起業家の皆さんにお伝えしているのは、2度、3度とノックして開かない扉であっても、礼儀正しく蹴り開けてやるぞというくらいのガッツでちょうど良いのでは、ということだったりします。ヨーロッパや東南アジアの起業家の売り込みを受けることも多々ありましたが、3通、4通とメールを送ってきますし、Facebookでの友達申請やTwitterのDMも同時に来ることも珍しくありません。さすがに「おいおい」と思うこともありましたが、よほど関係が悪くならない限り売り込みに熱心なのは良いこと。そういうのに比べると日本の起業家は売り込みに関して少し上品すぎるのかも、と思います。

広報
西村 賢

西村 賢

Partner, Chief Editor @ Coral Capital

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