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スタートアップにおける利益の追求

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」の投稿、「The Profit Motive」を翻訳したものです。


先週、伝統的なビジネス(テック企業でも、ベンチャー投資を受けた企業でも、グロース企業でもない会社)を経営している友人と興味深い話をしました。彼はテック企業から多くのソフトウェアを購入していますが、どのソフトウェア会社も利益を上げていないことに気づいたと言います。彼は常に利益が出るビジネスをしてきたので、その状態は妙に感じると言いました。彼は、投資家から出資を受けても、毎回1年以内に事業で得た利益で全額を返済してきたそうです。
友人の話は、テック企業、特にベンチャーキャピタルから出資を受けるテック企業が自社で持続可能な利益を生み出さなくても、きわめて長期間にわたって事業を継続できる点について考えるきっかけになりました。
利益を得るチャンスが十分に大きいのなら(Google、Amazon、Facebook、Twitterなど)、これは利益を創出する素晴らしい方法です。しかし、市場規模(TAM)が小さい、あるいは競合他社が多い(参入障壁がほぼない)などの要因によって利益を得るチャンスに限りがある場合は良い方法ではないでしょう。
ビジネスを持続可能にするために必要な資本(通常はプラスのキャッシュフローのことですが、ここではイグジットも含めます)が、持続可能になった会社の企業価値よりも低いとき、利益が生まれます。
何年も何年も損失が続いて、必要資金が増すほど、持続可能になったときの会社の企業価値は高くなければなりません。
スタートアップ/テック/VC業界にいる私たちの間違いはGoogle、Amazon、Facebook、Twitter、最近ではUber、Airbnb、Slackなどの会社を見て、すべてのビジネスで同じ戦略が通用すると考えていることではないでしょうか。残念ながら、すべてのビジネスで同じ戦略が通用するわけではありません。多くのスタートアップは持続可能な事業を作るために資本を使いすぎ、価値を創出するのではなく、浪費するばかりなのです。
創業者や経営陣、取締役会はグロースに投資するか(つまり、多額の資金を失うか)、それとも収益性を追求するか(ただしグロースを抑制する)についていつも頭を悩ませています。私が取締役を務めている会社も、投資先の会社も、いつもこれで悩んでいます。
この問題について私が伝えていることは、グロースは責任を持って行うものでなければならないこと(プラスのユニットエコノミクスに対してグロースで支出する)と、収益化への道筋が見えなければならないということです。もう1つ付け加えるなら、ピンチの場合は事業を傷つけることなく、利益を得られるようにしなければならないということです。もちろん、これらの「ルール」はアーリーステージの会社に適用すべきではありません。けれど、カスタマーベースが順調に増え、収益の流れができつつある会社はこのルールを守れるはずです。
私たちの投資先、ひいてはどのVCの投資先の中でも、このテストに合格できる会社は非常に少ないと思います。合格する会社はありますが、多くはないでしょう。私たちのポートフォリオには、利益を上げている企業が数社あります。また、収益化の道筋が見えていて、いざというときは事業に支障をきたずに収益化できる会社も数社あります。しかし、大多数の会社は、再び資金調達できると思って湯水のようにお金を使っています。
それだけの資金が手に入り続けるかもしれませんが、そうならないかもしれません。無限の資金があったとしても、多くのファウンダーやチームはある朝目を覚まし、会社の価値を、これまで自分たちが使ってきた総額以上にしなければならないというハードルに直面することになります。そして多くの会社はこのハードルを超えられないでしょう。
資本主義というのは利益を追求することで成り立っています。会社の価値は基本的に、将来のキャッシュフローを基準にして評価します。それもプラスのキャッシュフローです。将来、利益を生み出せないのなら、その事業に価値はありません。なので、利益が重要です。テック/VC/スタートアップ業界は利益をあまり重視していませんが、本当は重視すべきなのではないでしょうか。

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Editorial Team / 編集部

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