MarqVisionに投資した理由──日本の知財とブランドを守る

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Written by James Riney, 嘉陽 ティファニー
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知的財産(IP)の重要性が高まる中で
Coralでは、知的財産(IP)が日本にとって最も大きな資産の一つであり、同時に世界的に見ても最もリスクにさらされている分野の一つであると、以前から認識してきました。アニメやファッションから先端製造業まで、IPは日本の文化的・経済的影響力の基盤となっています。実際、日本は2023年と2024年に「国家ブランド指数」で世界第1位に選ばれました。
一方で、世界全体では模倣品による損失が年間約60兆円にのぼり、2030年には約105兆円に達すると予測されています。そのうち約75%はファッションや化粧品、アニメや映画などのエンターテインメント産業に集中していると言われています。

AIが変える脅威の風景
生成AIの登場により、侵害の規模と手口は格段に進化しました。模倣品、海賊版、ディープフェイク、無許可販売やなりすましは、今や数秒で生成・拡散されます。エージェント型のコーディングツールやAIを活用した開発者によって、一晩でECサイト全体が立ち上がることすらあります。ディープフェイクを利用したセレブの偽の広告が出回り、TikTok上の「RepTok」のようなコミュニティでは模倣品や“デュープ”が堂々と販売され、広範な消費者層にリーチしています。
その結果、ブランドにとってはブランド価値の毀損、売上の減少、消費者信頼の低下といった深刻な影響が生じています。従来のブランド保護ツールは、AI以前の時代に作られたため、依然として人手に頼るサービス中心のモデルに依存しています。人員過多による低い利益率、度重なる所有権の移転、コスト削減圧力によるサービス品質の低下が常態化しています。こうした構造的な弱点にAIによる脅威の加速が重なり、ブランドは十分に守られていません。
私たちにとって、IP・テクノロジー・ブランドコントロールの交差点で事業を展開する企業こそ、今後10年で重要になると確信しました。だからこそ、今回のシリーズBでMarqVisionに投資し、将来のIP・ブランド保護を形作る挑戦を共に支援できることを嬉しく思います。

ブランドプロテクションの新しいモデル
MarqVisionは世界初の「AIネイティブなIPオペレーティングシステム」を構築し、新しい世代の脅威に立ち向かうだけでなく、ブランドが存在するあらゆるデジタル・フィジカルの接点を自ら管理できるようにしています。現在提供している機能の一部をご紹介します:

  • MarqAI:模倣品、海賊版、ディープフェイク、無許可販売、なりすましに対するAI駆動の対策。手作業に比べて180倍のスピードで削除を実現し、従来型プレイヤーの16倍の削除件数を達成。
  • MarqFolio:商標出願、更新、モニタリングを一元管理するプラットフォーム。対策ツールと統合することで事務作業の負担を軽減します。
  • MarqLaw:削除通知、警告書、摘発といった法律対応をAIで自動化し、オンライン上の検知を現実の対処につなげるサービス。

MarqVisionの特長

  • AIネイティブの基盤:MarqVisionは設立当初から自動化エンジンとして設計され、法務の専門知識と組み合わせることで、対策のたびに独自モデルが学習・改善し続けます。
  • グローバルかつアジア発の展開:ブランドオーナーの多くは米国や欧州に拠点を置いていますが、侵害の大半はアジア(特に中国)から発生しています。MarqVisionは米国(ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク)、欧州(パリ)、アジア(ソウル、上海、そして東京)にオフィスを構え、問題が発生する現場で直接対策を行いながら、ブランドにも近い位置で活動しています。
  • 実際のビジネスインパクト:MarqVisionは守りのツールにとどまらず、成長を促進します。ラグジュアリーやファッションからゲーム、製薬、エレクトロニクスまで幅広い業界の顧客が、売上高の5〜10%の増加を実現しています。この明確なROIにより、利用は法務部門にとどまらず、現在ではユーザーの約60%がマーケティング、EC、営業などの事業部門に広がっています。MarqVisionは2025年初頭にARR 2,000万ドルを突破し、世界118カ国・1,500以上のプラットフォームで300社を超えるグローバルブランドに包括的なブランドコントロールを提供しています。

この成長を牽引しているのが、共同創業者兼CEOのMark Leeです。サンフランシスコで初めて彼に会ったとき、その洞察の深さと今後10年のIP・ブランド保護のビジョン、そしてMarqVisionが果たすべき役割について明確に語る姿に感銘を受けました。第一世代韓国系アメリカ人であるMarkは、マッキンゼーやAIスタートアップでの勤務を経てハーバード・ロースクールに進学し、その在学中にMarqVisionを創業しました。製品・ビジネス・法務の領域を自在に行き来できる稀有な能力を持ち、トップ企業出身の国際的な人材を束ねてグローバル組織を率いています。

MarqVisionの71億円のシリーズBへ参画
私たちは、MarqVisionの4,800万ドル(約71億円)のシリーズBラウンドに参画できることを大変嬉しく思います。これにより、累計調達額は約134億円となりました。今回のラウンドはPeak XV Partners(旧Sequoia Capital India & SEA)がリードし、HSG(旧Sequoia Capital China)、Salesforce Ventures、Michael Seibel氏、そして既存投資家のY Combinator、Altos Ventures、Atinumも参加しました。

日本でのローンチ
今回のラウンドを機に、MarqVisionは正式に日本での事業を開始しました。私たちも、この市場での成長を積極的に支援できることを非常に楽しみにしています。日本展開をリードするため、MarqVisionは鈴木 壮氏を初代カントリーマネージャーに迎えました。鈴木氏は、APAC地域における知的財産とオンラインブランド保護の分野で15年以上の経験を持っています。
8月には、弊社Coral Capitalの虎ノ門オフィスで「MarqVision Japan ローンチイベント」が開催されました。 ラグジュアリーブランド、製造業、政府関係者など、IP業界を代表するリーダーたちが参加し、AIを活用してIP保護を強化する方法、そしてブランド保護を収益成長のドライバーとして活用する方法という二つのテーマに大きな関心が寄せられていました。

今後の展望
私たちは、ブランド保護は単なる防御にとどまらず、経済成長の原動力になると考えています。特に日本のように、世界的に見て大きな潜在力を持ちながらもIPが十分に活用されていない市場では、その可能性は非常に魅力的です。
生成AIによって模倣品、なりすまし、無許可販売、海賊版が急速に拡大するなかで、侵害への対処からブランド全体のコントロールへと視点を転換する必要があります。MarqVisionはこの進化をリードし、企業が資産を守るだけでなく、ブランド体験そのものを設計し、さらなる価値を引き出せるよう支援しています。

MarqVisionのシリーズBや今後の展望については、TechCrunchBloomberg日経など各種メディア、ならびにMarqVision公式ブログでも取り上げられています。

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