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やりがい? お金? VCという職業の良い面、悪い面

ベンチャーキャピタリスト(VC)は、世界で最高の職業のひとつです。報酬を得ながら、新たなマーケットについて研究し、人脈を作り、世界を変えるビジョンを持つ人々と手を組むことができるからです。たくさんの業界について学び、それらがどのように変化するのかについて考えることが大好きな、勉強することが好きな人にはもってこいの職業です。あらゆるバックグラウンドを持つ人々と出会うことが大好きな人に最適な職業でもあります。また、いつか業界を代表するようになる企業と、創業初期の頃に深い関係を築くチャンスを、運が良ければ得られるような職業なのです。

さらにVCでは、大企業で働くような安定性を維持しながら、スタートアップで働くように柔軟な働き方をすることができます。ほとんどのVCファームでは、職場で着たいものを着てよいし、特定の時間にオフィスにいることを強制されることはありません。大企業で働くことに比べて、自分のスケジュールや生活をより自由にコントロールできるのです。一方、ファンドのマネジメントフィー(管理報酬)の支払い時期は基本的にあらかじめ決まっているため、キャッシュフローは各ファンドの運用期間にわたって予測可能です。このような構造により、VCファームがいきなり破綻する可能性は非常に低いのです(通常、新規にファンドを調達し続けることができないことにより、ゆるやかに破綻します)。

このように、VCはとても良い職業なので、文句をつけるのは難しいです。しかし、あえて「デメリット」を挙げるとすれば、それは以下のようなことでしょう。

フィードバックループがとても長い

自分が優れた投資家であるかどうかが分かるようになるまでに、非常に長期間待たなければいけません。大きな価値がある企業を作るには時間がかかります。投資した企業が勝者になるかどうかを判断できるようになるまで、およそ2〜3年かかります。そして、その企業がイグジットに至るまでには(シードステージから)7〜10年かかるかもしれません。つまり、何年もの間、自分が正しい決断をしたかどうかが分からないのです。勝者かと思われた企業が破綻することもあれば、敗者かと思われた企業が成功することもあるかもしれません。

私が創業したスタートアップは、その最たる例です。当初はSTORYS.JPとしてスタートし(敗者と言えるかも)、Coincheckにピボットした後(この10年ほどでも特大の場外ホームランのように見えた)、ハッキングに遭い、そこそこの金額で買収されました(敗者でも勝者でもない)。私たちに投資したVCはまるでジェットコースターに乗っているかのようで、何年も経つまで、投資を決めたことで最終的にどのような結果になるのかを知ることはできませんでした。

このような構造があるため、失敗から学ぶことはとても難しいのです。さらに厄介なことに、自分がVCに向いているかどうかを知る頃には、VCとしてのキャリアを何年間も積んでいて、進路を変えるのが困難になっているかもしれません。だからこそ、VCはキャリアの早い段階で、まずはシード投資家としての経験を積むべきだと私は思っています。より多くの投資をできるでしょうし、間違いをおかしても、それほどお金を失うことはありません。ものごとを学ぶ最良の方法は、まずやってみることです。より多くのシュートを打つことで、いくつもの実験を並行して行うことができるのです。

「ゆっくり豊かになる」ビジネスである

フィードバックループが長いことの2次的効果として、それが報酬体系に織り込まれているということが挙げられます(もちろんそうあるべきです!)。VCは報酬としてマネジメントフィー(管理報酬)とキャリー(成功報酬)を得ます。マネジメントフィーは通常、運用資産の2%で、VCファームの運営コストをカバーするために支払われます。よって、管理している資金が十分でない限り、マネジメントフィーだけでは多くのお金を儲けることはできません。VCが大きなお金を儲けられる理由は、キャリーによる収入があるからです。これは基本的には、投資による利益の一部です(通常20%)。100億円のファンドを運用している場合、まず100億円を返してからでないと、キャリーは1円も入ってきません。投資先の勝者が小さくないイグジットにたどり着くのに7年から10年かかることを考えると、キャリーを受け取るまでには、通常は少なくともそれと同じ時間がかかります。そして多くの場合、1社のイグジットでは100億円を回収することさえできないため、利益を上げるには複数の勝者か、あるいは大きなホームランが必要となります。創業者にとって20億円のイグジットは人生を変えるかもしれない一方で、VCにとってはそれほど大きな成果ではないのは、こういった理由があるからです。VCの保有分が10%であれば、ファンドのリターンは2億円だけなのです。VCの銀行口座にキャッシュが入るまでには、まだまだ長い道のりです!

小規模のファンドはもちろん例外です。5〜10億円のファンドを立ち上げた場合、キャリーを受け取るには、5〜10億円を返すだけでよいのです。前述の例になぞらえると、2億円のリターンでファンドの半分近くを返せることになります。自分とほぼ同時期に、10分の1未満の資金で運用を開始したファンドマネージャーが、早い段階でキャリーを得たおかげで、すでにポルシェに乗っているかもしれません。何とも皮肉なことです。

ミドルリスク、ミドルリターン

ALL STAR SAAS FUNDのVCである前田ヒロ氏はツイッターで、「起業家はハイリスク、ハイリターン。VCはミドルリスク、ミドルリターン」と、的を得た説明をしていました。ファウンダーもVCも経験した私は、両方の視点から話をすることができます。VCになると、あらゆることが薄まるのです。リスク、ストレス、栄光、経済面など、起業に伴うあらゆることが小さくなります。これは必ずしも悪いことではありませんが、留意しておくべきことです。

 

先に述べたように、VCはとても良い職業です。上記で挙げたデメリットは、起業家であることのストレスや、多くの大企業で働く中での不自由さに比べれば取るに足らないものです。VC業界で働く、数少ない幸運な人のひとりであることに、私は日々感謝しています。


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ベンチャーキャピタル
James Riney

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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