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不確実性が高い中でのリーダーシップとチームマネジメント

Withコロナ、Afterコロナという不確実性が極めて高い世界に生きるわたしたちは、日々の生活から企業の意思決定まで多くの場面において冷静さ、共感、そしてリーダーシップを必要としています。

新型コロナウィルスは世界中にとてつもなく大きな予測不可能な状況を作り出しました。予測不可能な状況は資金繰りなどの経済的なインパクトも大きいですが、心理的にもチームのモラルや協調性、また個人の幸福感や健康にも悪い影響を与えると言われています。予測不可能な状況での更なる不安や混乱はビジネスやチーム、個人の崩壊につながります。

このような環境下において、スタートアップ経営者や大企業の役員たちはどのようなリーダーシップを発揮してチームや組織のマネジメントをしていけばよいのでしょうか。多くのリーダーはこのようなときこそ自らが立ち上がり、自分の責任についてコミットすることの重要性をわかっています。わかっていないのは重要性ではなく、何から始めれば良いか、何を気を付けるべきかです。

リーダーシップ教育やマネジメント教育は必須とされていますが日本ではまだあまり一般的ではありません。今回、私自身のマネジメント実務経験やMBA時の学びを基に、心理学的・精神医学的観点も踏まえて、スタートアップ経営者やチームや組織内でリーダーシップを発揮されている皆様に対して少しでも参考になればと思います。

(1)崩壊していく兆候やパターンを認識する

わたしたちの言動や行動を崩壊へと導く要因はなんでしょうか?心理学の研究によると、私たちの、バイアス(偏見・固定観念)は不安定な状況下で強化され、負のサイクルに入っていくことが示されています。通常の日常生活においては約200あまりのバイアスによってわたしたちの認知能力が司られていると言われていますが、脅威や不安が大きな状況になると、ネガティブ・バイアス、アベイラビリティ・バイアス、確証バイアスの3つが大きくなると言われています。

ネガティブ・バイアス

ネガティブ・バイアスとは、ネガティブな出来事に対して過剰に反応して、それをより強く記憶に留めてしまうことです。例えば業務におけるちょっとした小さなミスを普段よりも大きなミスと認識してしまって過剰に反応してしまうことがあります。また、会社や人に対して負のイメージを抱いたとき、そのイメージが普段以上に増幅してしまいます。

アベイラビリティ・バイアス

アベイラビリティ・バイアスとは、自分の手に入りやすい情報のみで意思決定をしてしまうことです。手に入りやすい情報が正しい情報や有益な情報であるとは限らないにも関わらず、です。不安定な状況でこそ、チームメンバーには普段より幅広い情報に基づいた行動を促しましょう。

確証バイアス

確証バイアスとは、わたしたちは自分の考えや認識に近い情報を集めたがる傾向にあり、情報を集めることによって、さらに自分の考えは正しいと思い込んでしまうことです。例えばトレーダーが「今後マーケットは上がる」と思ったとき、彼または彼女は「マーケットが上がる」という情報を探す傾向にあり、「マーケットが下がる」という情報収集を避ける傾向にあります。さらに現在のキュレーションアルゴリズムは自分の意見に近い情報を集めるように設計されており、この傾向を助長しています。意思決定の前に自分やチームの意見とは逆のデータや情報を探してみましょう。

わたしたちの感情も意思決定に大きな影響を与えます。そしてわたしたちの感情は上で述べたバイアスに大きく影響されることを忘れてはなりません。3つのバイアスが組み合わさり、さらに感情に対してもネガティブな影響を与えると、わたしたちの感情は容易に負のスパイラルや崩壊パターンに陥ってしまいます。リーダーはわたしたちが陥りがちなこれらのバイアスやパターンを把握した上で、自分の発言やチームメンバーの発言が、ネガティブで断定的になってきていないか注意を払いましょう。

(2)チームの心理的安全性を高める

わたしたちの身体的反応や行動の多くは闘争本能または逃走本能によって制御されています。戦うか、逃げるかです。一方、わたしたちの脳は、不安定な状況下ではあまり効果的に機能しないことがわかっています。不安な状況下で分泌されるノルアドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが過剰に分泌されると、わたしたちの脳は機能低下し、記憶力や認知能力、そして生産性も低下してしまいます。

不確実な状況下でこそ、リーダーは心理的安全性のある環境を作り出し、チームメンバーの不安を取り除かなければなりません。リーダーは共感力を持ってチームメンバーの不安や悩みに耳を傾け、彼ら彼女らが話を聞いてもらえている、サポートしてもらえている、と感じられる環境を作らなければなりません。

安心できる環境を作ることで神経伝達物質の変化、つまりノルアドレナリンコルチゾールといったホルモンの適切な量の分泌を促し、わたしたちの脳の働きをより良い方向へと導いてくれます。心理的安定性が高い環境下ではチームは円滑に動き、不測の事態にもより効果的に対応します。

もしあたながチームメンバーや部下が抱える課題に取り組もうとしていたり、彼らにメッセージを届けようとしている場合、まず第一に共感を示すことを心がけると良いでしょう。あなた個人の経験やチャレンジもオープンに共有し、より人間らしさを示すのです。最初は不慣れなため恥ずかしく居心地悪く感じるかもしれませんが、すぐに慣れます。でも気をつけてください、重要なのは共感を高めることであって部下にあなたの話を聞かせることではありません!

リモートな環境やバーチャル環境でも仕事や協業ができることがわかったことは2020年の大きな進展の1つかもしれません。しかし、仕事ができていること、仕事が進んでいることに安心してはいけません。コミュニケーションの頻度や質は確実に落ちているはずです。以前にも増して、チームメンバーや部下とのカジュアルな雑談を増やしたり、オンラインでの挨拶や感謝の言葉を増やすと良いと思います。意見を述べたり、新しいことにチャレンジしても無視されたり批判されたりしない、自分は価値あるメンバーとして受け入れられているという安心感を持って仕事に打ち込めるよう、リーダーはできる限りの努力と工夫をしてください。

その上で、改めて組織の目標を共有し、この状況をみんなで乗り切りるんだというポジティブなモーメンタムを作っていきましょう。

(3)大きな挑戦を示し、それを分解して小さな全力疾走を促す

チームや組織の生産性を高める有効な対策はなんでしょう?わたしたちは短距離走またはハッカソンからも学べるかもしれません。

進捗確認やフォローアップためにチームメンバーとオンライン会議をすることも大事ですが、まずはあらためて数週間や数か月の時間を要するより大きな課題や目標を提示した方が良いかもしれません。より大きな課題はその解決に向けた意思疎通のために必然的にチーム内の協業やコミュニケーションを増やしますし、結果チームの生産性が上がると言われています。

短距離アスリートの世界では、良いタイムを出すという課題をますばスタートダッシュ、加速、中間疾走、フィニッシュの4つの構成要素に分解し、それぞれの構成要素に専門チームやスタッフをつけながら集中して課題解決に当たるようです。ハッカソンでも与えられたお題に対して、要素分解をして一人ひとりの役割分担を決め、その役割は各個人に信頼して任せて進めていきます。部分から始めるのではなく、全体を確認してからそれを分解して部分に落とし込み、部分については各チームや個人に任せて全力疾走を促す、という方法です。

より大きな目標を示しているか、各チームや個人が目標の構成要素において全力疾走をしているか、リーダーはこの2点を確認すると良いかもしれません。

まとめ

わたしたちはどんなに不安やストレスが大きな状況でも力強く生き抜いていけるはずです。本来わたしたちの身体や脳はそのようにできてきます。コロナウィルスは人々の生活や経済に大きな影響を与えていますが、その中でこそリーダーは自分自身やチームメンバーの言動・行動パターンを認知し、チームメンバーの心理的安全性を確保し、より大きな目標を示してメンバーの想像力や生産性を高めていくことこそが自身の役割と認識して行動することが求められます。

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Kiyoshi Seko

Senior Associate @ Coral Capital

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