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バイデン政権はシリコンバレーにどんな影響を与えるか?

トランプ政権による波乱万丈の4年に、2020年という異例続きの年が重なり、まさに激動の日々でしたが、最近になってようやく明るい兆しが見えてきました。振り返れば、グローバルトップニュースが毎日のようにトランプ大統領のツイートで持ちきりになるなど、本当に騒がしい4年間でした。Y Combinatorの共同創業者であるPaul Graham氏も次のように語っています。「この4年間、まるでCPUの5%を常に消費し続けるバックグラウンドプロセスを抱えているような気分だったが、やっと誰かが強制終了させてくれた」。トランプ政権の影響で余計なストレスや懸念が増え、同じように負担に感じていた人は少なくないのではないでしょうか。

「トランプ大統領リアリティーショー」のシーズン1が終わりを迎える中、テック界ではすでにバイデン政権下で起こり得る業界環境の変化について考え始めています。しかし、そもそも深い分断と世界的パンデミックに苛まれた国家を引き継ぐところからスタートしなければならないので、結局のところ、それほど著しい変化は起こらないかもしれません。実際、バイデン氏も勝利宣言スピーチで「今は国を癒す時だ」と言っていました。おそらくバイデン政権はアメリカを回復軌道に乗せるための対応で手一杯になると思われます。

いずれにしても、テック界では以下のポイントについて今後注目していく必要があるでしょう。

ソーシャルメディアの規制

最近では共和党と民主党の隔たりが大きく、意見が一致することは滅多にないようですが、「セクション230」という法律の撤廃については両党とも支持する姿勢を見せています。セクション230では、オンラインプラットフォームは「別のコンテンツ提供者が提供するコンテンツの発行者もしくは発信者とはみなされない」と定められています。つまり、この法律のおかげでFacebookやTwitterなどのプラットフォームはユーザーが投稿したコンテンツに対する法的責任を負わずに済んでいるのです。

セクション230の撤廃を求める理由は両党の間で異なります。民主党がヘイトスピーチや誤情報の拡散防止を求める一方で、トランプを筆頭とした共和党支持者は自分たちが発信するコンテンツが不当な検閲をかけられていると主張し、そんなプラットフォームに保護は必要ないと訴えています。以前にも記事で取り上げましたが、これはあらゆる面で非常に複雑なテーマです。ヘイトスピーチや誤情報がなんらかの形で規制されるべきだという意見には、おそらくほとんどの人が賛同するでしょう。しかし、ソーシャル・メディア・プラットフォームが世界中から発信される全てのコンテンツの管理とファクトチェックを行えるかというと、おそらく不可能です。また、物事の真偽をトップダウンで決定するシステムを一度確立してしまうと、長期的に様々な問題に発展しかねません。例えば、昔の人は太陽や、月、星、他の惑星が全て地球の周りを回っていると信じていました。もし、コンテンツの規制がある中、ガリレオが全く別の主張をツイートしていたら、どうなっていたでしょうか。私たちの考える「真実」というのは時間とともに変わっていくものなのです。

こうした懸念もありますが、2大政党の意見が一致しているので、今後数年間でなんらかの変化が起こる可能性が高いでしょう。決定次第では、長期的には広範囲かつ大きな影響を及ぼすかもしれません。その可能性の1つとして、昨年末、Jack Dorsey CEOがTwitterの意思決定を集権型から分散型へ移行することを検討中であるとツイートしました。彼いわく、「情報の悪用や、誤解を招くような情報に対処するためのグローバルポリシーを実践するにあたって、集権的なやり方では、多くの人に過度の負担をかけずに長期的にスケールすることが難しい」とのことです。

GAFAの分割

GAFAを分割させるかどうかの決定もテック界にとって注目するべきポイントになります。今年の10月上旬、民主党主導の小委員会によって反トラスト法の強化を勧告する調査報告書が提出されました。同報告書では、AppleやAmazon、Facebook、Googleが独占的地位を利用し、健全な競争を妨げているという調査結果が述べられています。

同報告書が提案する新しい法律のうちいくつかは、将来的にテック企業の分割を進め、企業買収の規制強化につながる可能性を含むものです。また、現在の反トラスト法を見直し、テック企業に対する取り締まりを強化するべきだという提言も報告書に含まれています。

では、テック界への実際の影響は?この報告書自体は、新しく法案を作る際に指針として大きな影響力を持つかもしれませんが、現段階ではそれ以上の効力を持つものではありません。しかし、大手テック企業が強大になりすぎているという点では両党の意見が一致しているようなので、次の政権で何かしらの対策が施される可能性が高いでしょう。もしそうなった場合、良い点としては、スタートアップなどの小さい企業でもGAFAを相手に今よりも戦えるようになるかもしれません。マイナス面としては、GAFAが現在のように多くの企業を買収できなくなる可能性が挙げられます。

キャピタルゲイン課税の引き上げ

スタートアップ界にとって最も重大な問題の1つとなり得るのが、キャピタルゲイン課税の引き上げの可能性です。キャピタルゲイン課税は資産の売却益にかけられる税金のことですが、これが引き上げられれば起業家や従業員、投資家など、スタートアップ界で株を所有する全ての人たちが影響を受けます。現在、米国のキャピタルゲイン課税は20%が上限で、所得税をはるかに下回る税率に抑えられています。

これに対して、バイデン氏は年収100万ドル(約1億円)超の納税者である場合に所得税率と同率をキャピタルゲインに課す法改正を提案しています。これが実現すれば実質2倍の税率になり、スタートアップ界に深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。特にリスク評価面での影響が甚大です。スタートアップを成功させるのはとても難しく、心身ともに非常に多くの労力を要しますが、その多くが失敗に終わってしまいます。にもかかわらず起業家やその従業員、投資家たちがスタートアップの立ち上げに携わり、リスクを受け入れるのは、成功した暁に得られるであろう大きなリターンに期待しているからです。このインセンティブが減れば、今後はスタートアップ界に優秀な人材や豊富な投資資金が集まりにくくなる可能性も考えられます。

とはいえ、このような重要な税制はそう簡単に変えられるものではなく、様々な議論や承認の段階を踏む必要があります。まず、民主党が下院と上院の両方で過半数以上の議席を獲得することが1つの条件になります。そして、税制案を確実に通すなら、バイデン氏の主導で他の選挙公約よりも優先して取り組まなければなりません。


シリコンバレーに対して厳しい公約が多いようですが、実際はメディアや支持者の間で騒がれていたほどバイデン政権がテック界と対立するわけではなく、むしろ想像以上に寄り添った対応を取る可能性のほうが高いと考えられます。例えば、政治資金を調査する団体であるCenter for Responsive Politicsによると、バイデン氏の選挙キャンペーンへの寄付額ランキングでは、上位10位のうちGAFAとMicrosoftが半数を占めていました。また、バイデン氏の政権移行チームにFacebookの元副顧問弁護士やAppleの元政務関係担当ヴァイスプレジデントが任命され、Googleの元CEOであるEric Schmidt氏が新政権のテクノロジー業界対策チームへ任命される可能性も噂されるなど、テック界寄りの人事が進んでいます。なんらかの変革が進むことはほぼ確実ですが、シリコンバレーと新政権の密接な関係を考えると、選挙キャンペーン中に懸念されていたほどのマイナスインパクトにはならないかもしれません。

ベンチャーエコシステム
James Riney

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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