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自動化と移民受け入れが日本のスタートアップにもたらす機会

Coral Insights読者の方なら、日本の労働力不足が深刻化していることをご存知だと思います。パーソル総合研究所は今年4月に発表した報告書で、日本は2030年に644万人の労働力不足に直面するとの予測を発表しました。この切迫した課題の兆候は、特に外食産業や小売業を中心に、いくつかの産業ですでに顕在化しています。24時間営業が当たり前とされているコンビニでさえ、深夜営業を継続するのに苦戦しているのです(コンビニなのにぜんぜんコンビニエント(便利)じゃなくなる!)。

労働力不足は、政治家や企業幹部にとって最優先すべき課題のひとつになりました。近年、移民に関する規制は緩和され、働き方改革は以前にもまして主要な政策となっています。それと並行して、企業幹部は労働力不足に対応するべく、外国人の雇用と業務プロセスの自動化についてより真剣に考えるようになりました。こういったニーズは、特に2つの分野においてスタートアップに新たな機会を生み出しました。その分野とは、自動化と移民の受け入れです。自動化に関しては、私たちはこれまで多くの投資をしてきました。移民の受け入れに関する投資も、これから増やしていきたいと考えています。

自動化

自動化の需要が高まることで、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のプロバイダーや、ほかの自動化のためのロボット関連企業が恩恵を受けるのは想像に容易いでしょう。日本はすでに、世界で3番目に大きなRPAの市場です。業界のリーディングカンパニーであるUiPathにとって、日本は最大規模か、少なくとも最大に近い規模の市場ではあるでしょう。今年のBloombergの記事によると、同社の日本オフィスの従業員数は2017年2月に3人だったのが、2019年7月には270人まで増えたということです。これは、同社の世界全体の従業員数の約10%を占める数字です。

RPAは、レガシーシステムを基盤に素早くシステムを構築する際に役立ちます。ただし、RPAは既存のインターフェイス上に構築されているため、インターフェイスが変更されると使えなくなってしまいます。RPAと似たサービスであるiPaaS(Integration Platform as a Service)は、この問題をAPIを介してシステム同士を接続することによって解決します。私たちの投資先企業であるAnyflowは、国内外の様々なソフトウェアを連携できるiPaaSを構築しています。

また、投資先企業であるコネクテッドロボティクスは、多くの人が「ロボット」という言葉からイメージするようなロボットを作っています。同社は、業務用キッチンで作業をするロボットアーム用のソフトウェアを開発しています。同社のロボットを用いれば、唐揚げを揚げたり、食器を食洗機まで運んだり、焼き鳥をひっくり返したりする作業を自動化できます。そうすることで、従業員は顧客の対応に集中することができるのです。

日本では、RPAやロボット関連企業に加えてSaaS企業も自動化の追い風を受けています。企業幹部が組織の効率を上げようと試行錯誤した結果、業務効率化のソフトウェアを導入するに至っているのです。私たちはこの分野において、契約管理のHolmes、人事管理のSmartHR、薬歴管理のカケハシなど、多くの企業に投資してきました。

移民受け入れ

自動化によって解決できることは限られています。業務によっては人間による作業が欠かせないものもあります。日本の出生率の低さを考えると、このままでは移民を増やさざるを得ないでしょう。もちろん政府はこのことに気づいています。2017年には、高度人材がより短期間で永住権を取得できる制度を実施し、2018年には単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する法案を可決しました。政府の推計によると、国内には現在約273万人の外国人が暮らしていて、この数字は前年から6.6%増加しています。

スタートアップにとって、移民受け入れの拡大にもいくつかの機会があります。まず需要があるのは、シンプルに日本企業と外国人人材の橋渡し役になることです。この分野に取り組んでいるスタートアップがいくつか台頭しており、乗るには良い波だといえるでしょう。優れた外国人人材を見つけ出し、研修を施し、日本企業に紹介するという課題を、スケーラブルに解決しようとしているファウンダーの方がいたら、ぜひお会いしたいと思っています。

また、外国人人口の増加に伴い、外国人のニーズに特化したプロダクトやサービスをつくる機会も生まれます。日本に住む外国人の間によくある不満としては、住宅や金融サービスなどが挙げられます。まずはそこから始めてみるのも良いでしょう。

言うまでもなく、自動化と移民受け入れは、労働力不足に最も苦しんでいる業界で特に役立つでしょう。日本商工会議所と東京商工会議所による調査によれば、以下のような業界が該当します。これらの業界において自動化や移民関連のプロダクトをつくっているファウンダーの方がいれば、ぜひご連絡ください

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Founding Partner & CEO @ Coral Capital

James Riney

Founding Partner & CEO @ Coral Capital

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